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プリコネOP「Lost Princess」にみるアニソンとしての矜持

絶賛放送中のアニメ「プリンセスコネクト!Re:Dive」

原作ゲームアプリの主題歌でもあり、アニメOPにも使用されている「Lost Princess」が2020年というタイムラインにおいて衝撃的だったので紹介させて欲しい。

 

 

 

そもそもプリコネを見始めたきっかけは本当に些細なもので、このすばの監督の作品だよーと知人に教えてもらったから。ちょうどHDに撮りためていたし、進行クールの作品を見るのにたいそうな理由はいらないのです。

1話はOPがなかった、と思う。見た後すぐHDから消したので忘れてしまいましたが。

冒頭からいきなりざっくりで申し訳ない。記憶によると多分2話からOPがついた。

いやね、これがもうばちくそに最高なんですわ。

 

【アニメOPver】

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まるで90年〜00年初頭のアニソンじゃありません?胸が熱くなりません?

いま2020年ですよ??最高かよ!

しかも(TVCMで流れてたあの曲、OPに使ってくれないかなあ〜)ってこっちの期待通り!!

 

今日はそういうお話。

 

大前提としてプリンセスコネクト!Re:Diveの原作は未プレイなので、今回取り上げるにあたって少々調べました。

ガールフレンド(仮)などを手がけたサイバーエージェント(略称CA)とその子会社Cygamesが共同制作したタイトルがプリンセスコネクト! 通称プリコネ。

Re:Diveがついてない生のプリコネがあったんだね。知らなかった。以後、この記事中でプリコネとはスマホアプリのRe:Diveとそのアニメを指します。

プリコネといえば、Lost PrincessをBGMにしたTVCMの大量展開など、結構な広告宣伝費を突っ込んでる印象。プリコネに限らず、バハムート、グラブルもTVCMガンガンやってるし、CA本体が手がけたガールフレンド(仮)も同様でしたね。というかスマホゲームは他社もガンガンTVCM打っている。ガラケー時代にGREEが市場を席巻してから10年以上変わらない構図。

気になるのは、これだけ広告宣伝費投下して、利益は出ているのか?という疑問。

Cygamesの前期2019/9月期の業績は売上1,086億円、当期純利益110億円だそう。

最終利益率10%超のモンスター企業ですね。

プリコネだけ開発・運営しているわけではないので本来であればゲームタイトルごとに売上、販管費(特に広告宣伝費)を分析したいところ。

なんならスマホゲーム以外からの売上もあるだろうから事業セグメント分けする必要があるが、それをやりだすとビジネスモデル解説ブログになるので、今回はざっくりと「プリコネのTVCM打ちまくっても、めっちゃ儲かってる」としておきましょう。ロイヤルユーザーの皆様、本日も課金ご苦労様です!!

実際、未プレイの筆者でも“プリコネ”というゲームの存在を認知しているし、アニメを見るきっかけになったので、広告宣伝費を投下した甲斐はあったのではないか。

ここで、

アニメを見るきっかけになった

というのが、結構核心に迫った一文でして。

プリコネのアニメは製作委員会方式をとっておりCygamesも名を連ねます。

そしてアニメ制作はCygamesPictures。曰く、Cygames子会社の制作会社で、調べると地上波放送作品としてはプリコネが2作めのよう。CA本体から見ると孫会社。

CygamesPicturesはアニメ制作環境とアニメーターの待遇改善を目的として、グループ内に設置した制作会社のようです。

なるほど確かにプリコネのアニメを見ていると、徹底したクオリティコントロールがされている。

つまりゲームの制作から、アニメの制作まで全てCAグループが手がけています。

 

ここからわかることは?

 

おそらくですがゲーム制作時点からアニメ化も見込んでいたのでしょう。

アニメは芸術的観点を一切排除すれば、原作の新規獲得広告チャネルの1つであると言えます。

ゲームリリースから2年近くたったタイミングでアニメを放送するこの意味を突き詰めると、当然既存顧客へのサービスもあるわけですが、メインはアニメから入った新規顧客の獲得、原作への送客です。

送客するなら、効率よくしたいです。

ここでCAの戦略が見え隠れします。

数年以上の中長期スパンでゲームをグロースさせるためにCAグループの武器を横断的に使ったのではないか、と推測します。

ゲーム原作のアニメは別に今となっては珍しくないですが、ゲームの主題歌を制作して、TVCMに起用、さらにはアニメ主題歌にも起用するケースは少ないように思います。

ですが、プリコネはそれをやった。

単にゲームアプリのTVCMがゲームアプリへの誘導のため、アニメのCMがアニメ視聴の誘導のため、と独立していたら、広告費も工数も倍かかるしもったいないですよね。

さらにはアニメはとことん原作ゲームの宣伝を兼ねたいですよね。

ところが、共通してどちらも同じ歌モノの主題歌を登場させると、どうでしょう。

1年半以上、TVCMでLost Princessを聞かされたコンシューマーは、プリコネといえばLost Princess、Lost Princessといえばプリコネ、と認知しています。

何気なくプリコネのアニメを見はじめて、OPに知ってる曲が流れた時のインパクトは無視できないでしょう!まさに筆者が経験した感覚です。現に1銭も入らないのに勝手に紹介記事を書いている。

こうなると、ゲームのTVCMがアニメの宣伝もかねる状態です。

先んじて放送していた、Lost PrincessがBGMのゲーム宣伝TVCMは、巡り巡ってアニメOPを経由して、新規顧客獲得に一役買っている。

実に効率のよい戦略です。

さすがは広告の会社です。

すると、アニメOPにゲーム主題歌を使う前提でテーマ楽曲が制作され、ゆえにLost Princessが誕生したことは十分頷けます。

さらには、ゲーム主題歌にも関わらず、Lost Princessがアニメファンの心をキャッチするための、アニソン然としたメロディなのも納得がいきます。

自社グループ完結の企画だからこそ、成し得た戦略でしょう。

おそるべしサイバーエージェント

ところで、原作ゲームのアニメーションはCygamesPicturesではなくWIT STUDIOがつくっています。

なぜ、地上波アニメと原作ゲームで制作会社を分けているのかという疑問が残ります。

おそらくCygamesPicturesは立ちあがったばかりで、アニメという有期の作品をつくることはできるが、イベント更新のために発生するアニメーションを都度制作するには慣れた外部スタジオが適していたのではないかと思いますが推測の域を出ません。

機会があればCA関係者に聞いてみます。

 

さて、めっちゃCAを褒めちぎってしまいましたが、これはあくまで導入

TVCMはLost Princessのサビ頭から15秒未満しか使われていないわけですが、アニメ2話ではじめてOPが登場して、1分30秒の尺を聞いて、衝撃を受けたのです。

なんだこれは、と。

アニメOP尺を十数回聴いて、虜になって。気になって当然フルも聴きました。

 

【フル】

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いや、フルの方がすげえ。

いまではOP尺もフルもどっちも繰り返し聴いています。

1つの曲を繰り返しリピートして聴きまくったのはハンブレッダーズのユースレスマシン以来。いや、たとえ下手か。割と最近だな。

アニソンだと、SSSS.GRIDMAN OPのUNION以来です。

全然飽きがこない。

 

 

まず、出だしから一気にリスナーの心を引き寄せる金管楽器のバキバキ旋律ですよ。

開幕1秒で勝敗が決している。楽曲の勝ち。リスナーの負け。

そしてピアノをバックに、主演声優3人の歌唱が始まります。

歌唱は徹頭徹尾、ビブラート、しゃくり、こぶし、その他不要なアクセント・手法を一切排している。

いうなればピュア。

年頃の少女の清廉潔白さ、それでいて不安定さを表したような歌唱法。

俗さが無いのがいい。

語りかけるような歌唱法ではないので、寄り添いすぎず、突き放されすぎず、という感覚になります。

三者的な感覚。

ニュートラルな感覚。

それがいい。

素直に楽曲のみに没入できます。

歌詞で使われる二人称の「君」もまさに、年頃の人物同士の絶妙な距離感を表しているかのようです。

さて、再びインストに戻るのですが、主張するベース、ドラムのリズム、バイオリンのストリングス、後ろのオケが超気持ちいい!!

物語のスタートを予感させるアニソン然とした王道メロディです。

とおもったらAメロのライン。いやなんだこれ?

半音が気持ちよすぎる。どれだけ経験積んだら、味のあるメロディおもいつくの?

Bメロはいかにもなアニソンメロディ。アップダウンを繰り返しつつ音階があがり、サビへの盛り上がりを期待させる。

そして、サビはこれでもかというほどキャッチー。

1サビ~2Aメロの間奏に突然登場するgtもアニソンらしい展開。

極め付けに一度聞いただけでは絶対に覚えられないCメロ。どこまでもアニソンの王道をいく。 

転調し冒頭の歌唱フレーズをくりかえし、さらに転調して同じフレーズをくりかえし、盛り上がりに盛り上がって、いよいよ大サビかと思いきや!

なんと!サビのメロディにはいかず終わる!

いやなにそれ、本当に待って。

なんでそんな大胆な構成が思いつくのか。

俺だったら絶対大サビにもっていくけど。

始めた聞いた時は拍子抜というかきっと不完全燃焼で終わるだろう。

こちとらキャッチーなサビを聞きたいので、もう一度聞こうとリピートするわけです。

 

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・・・

おわかりだろうか。

我々は、すでにこの曲の恐ろしい術中にはまっている。

そう、この楽曲、何回も何回も聴かせることを前提にめちゃくちゃ作り込まれた楽曲なのだ。

voが終わって流れるのは、冒頭コンマ0秒で流れた、印象的な金管楽器のフレーズだ。

意図的に曲のなかでループを表現している。

なんと憎い演出か!!

我々は、再びこの曲をフルで聴くことになる。

魅力は散々語り尽くした通り。

冒頭からまたパンチラインをなぞるのだ。

どんどん頭の中に刷り込まれていくこと不可避だ。

ここでよくプリコネのタイトルを思い出して欲しい。

Re:Dive

ふたたび潜るのだ。

我々は、音楽の海に何度もなんども潜っている。

おいおいどこまで世界観統一されてんだ!!

 

誤解のないように付け加えておくと、Lost Princessがプリコネと関係ない曲であったとしても、素晴らしい完成度であると思う。

歌詞にあまり触れなかったが、1番と2番のAメロで韻をふむ構成となっている点、個人的に好き。

サビだけで現れる句点は、歌詞カードを読んだ時にしか意識されないポイントだが、さながら少女の心情を描写しているようだ。

そしてメロディをさらに褒めちぎると、生音のリズムが気持ちいい。

自然と体が揺れる心地よさだ。

調べてみると作曲:田中公平 編曲:根岸貴幸という組み合わせは過去にONE PIECEウィーアー!、さらにはサクラ大戦シリーズの檄!帝国華撃団を手がけたコンビだ。

こりゃ、とんでもねえ。

冒頭に書いた通り、90年〜00年初頭のアニソン らしさを感じるのも頷ける。

そして今の俺にはわかる。

これすらCAの戦略であろうと。

 

スマホアプリゲームの主な収益はユーザー課金だ。

ユーザー課金のコアターゲットは収入を得ていて、世帯を持つ前の、可処分所得の高い独身の大人だ。

プリコネでいえば成人男性。年齢にして23~30歳。

さて、この年代の成人男性が「懐かしい」と思うアニメの年代はいつか?

そう、90年〜00年がドンピシャ。

恐ろしいぞ、サイバーエージェント

 

TVCMの大量展開による断片的な記憶。

アニメOPで記憶のピースと巡りあう一体感。

この快感は、もはや麻薬である。

 

アニメ中ではLost Princessのインストverがながれる。

これほど端的に世界観を表現するのに一役かっている曲はなかなかない。

なのに肝心のゲームTVCMは最近全くLost Princessを使っていない。

さらに先を見越した展開。ずるい。

ブレイブソード×ブレイズソウルもCMの大枠をずっと変えることなく、コンシューマーの圧倒的認知を得る手法をとっているが、あちらをアニメ化するなら別途、OP曲を用意する必要がある。

せっかく得た認知も、いまひとつ効果は得られないのではないか。

もっと言えば、ソフトバンク白戸家とお父さん犬、タケモトピアノもずっと同じCM、シリーズだ。

けれどアニメ化前提において、アニメで必ず使われるOP、EDに着目し、ゲームの宣伝時から歌を前面に押し出したCAの戦略、そして楽曲の世界観、狙いすまされたターゲット、すべてに脱帽である。

歌のもつ力は強い。

ゲーム主題歌であればカルマなどを生み出したテイルズシリーズがこの分野の十八番。

プリコネに紐付けるのか、CAという企業に紐付けるか、日が浅いので結論づけるには難しいところだが、「CAのアニメ(ゲーム)って曲がいいよね!」と、結露したドリンクをすすりながらマックで中高生がトークする日もそう遠くないはず。

 

いやはや。

たくさんの大人たちが数年間の時間をかけてここまで練ったのだろう。

大丈夫、しっかり受け取ったよ。

 

ゲームはインストールしないけど、CD買ってちょっと貢献します。